歯科用接着剤について

歯科では多くの接着剤を使用します。なぜなら「詰め物」や「差し歯」など、多くの歯科材料は、接着剤を介して歯と接着しているからです。しかし接着剤の接着力には強弱があり、そしてその接着力は永遠に続くものではありません。現在の歯科用接着剤は、接着持続期間が約4〜7年(更に短いものや長いものも存在する)に設定されています。さて、そう考えると、その接着期間が過ぎると、「詰め物」や「差し歯」が外れてしまうのではないかと思えてしまいますが、そうではありません。物理的に空間を埋める物質と化します。そのため歯科用接着剤の歴史は、①接着力の向上、②接着持続時間の延長、③構造的強度の向上を目標に開発されてきました(その他には色調など)。 しかし、やはり、接着持続時間の延長には、限界があり、構造強度も時間とともに劣化していきます。そうなればどうなるか?そう「詰め物」や「差し歯」の脱離や、歯と接着剤の隙間から再度虫歯になってしまう可能性が非常に高まってしまうのです。虫歯になる前に脱離してきた場合は非常にラッキーで、虫歯になりそれと共に歯が少し欠けて脱離してくるケースがほとんどです。 では、歯科用接着剤とどのように付き合っていけば良いのでしょうか。 対処法の1つ目は、定期的に歯科医院で「詰め物」や「差し歯」が脱離していないか、歯と接着剤の隙間が、虫歯になっていないかを確認してもらうことです。「詰め物」の場合の確認は比較的容易でレントゲン撮影を行えば写って来ますし目視もしやすい、先述した拡大鏡等を使用すれば発見の確率も向上します。問題は「差し歯」の方で、「差し歯」の中がどうなっているかは、どうしても確認できません。虫歯になる前に脱離して来ることを願うばかりです。そのため他の歯と連結していたり、ブリッジ治療等を受けている場合は、より脱離しにくくなるため「差し歯」の中が虫歯になってしまう可能性がより高まってしまうのです。2つ目の対処法は、定期的に新しい「詰め物」や「差し歯」に入れ替える、です。実施していらっしゃる方も少数ですがいらっしゃいます。 歯科界的には、2つの考え方が存在し、より弱い歯科用接着剤を使用し、虫歯等になった時に脱離しやすくしておく方向性の考え方と、より強い歯科用接着剤を使用し、虫歯を防ぐ考え方があり、そのどちらかを選択している、もしくはどちらも選択している歯科医が存在するため、本来、歯科用接着剤の選択は接着前の選択と説明が必要と思われます。

当医院では、ケースにより、4種類の歯科用接着剤を使い分けています。

「詰め物」や「差し歯」に気が行きそうですが、歯科用接着剤は、歯科治療成功のための非常に重要なファクターの1つなのです。